全長2,740KM、南部9カ国を貫くザンベジ川の流域には年間をとおして緑が延々と続き、地元民や多様な動物達の生命を育んでいる。
アフリカ第4の大河であるが、ビクトリアフォールズやカリバ湖等の観光地を除くと、文明の影響がさほど及んでいない。
ザンビア・アンゴラ・DRコンゴの国境付近の鬱蒼とした森を抜け、小川を遡ると涌き水にたどり着く。
地中から湧き出すこの少量の水が、巨大なビクトリアフォールズを抱く大河となるとは信じがたい。
ビクトリアフォールズは南米のイグアス、北米のナイアガラと共に世界三大瀑布とされている。
そのスケールの大きさから、全体を撮るにはヘリやマイクロライトでの空撮が必要となるほどだ。
この滝を目当てに古くから世界中からの観光客が集まり、高級ホテルが立ち並び、常に賑わいをみせている。
ザンベジ川流域に住むトンガ民族にとって、ザンベジ川は生活の糧だ。
彼らは頭部が魚で首から下は蛇である、ザンベジ川の守護神《ニャミニャミ》を崇拝する。
トンガの人々が飢えで苦しんでいた時にニャミニャミが村を訪れ、自分の肉を人々に分け与えたという伝説が残る。
ザンベジ川を堰き止めたカリバダムの工事には100人以上の犠牲者が出たが、これもニャミニャミの仕業だと信じている。
カリバダムによりできたカリバ湖には、陸地だった頃の巨木の先端が湖面から突き出している。
鏡のような水面に夕日に照らされた木々が映る様子は、とても神秘的だ。
カリバ湖は釣りの名所となり、湖岸には高級ヨットが数多く停泊し、リゾートホテルもできた。
湖岸の国立公園には数多くの野生動物が徘徊し、夜になるとカバやライオンの鳴き声で騒々しい。
ザンビア西部に住むロジの人々は、雨期になると氾濫するザンベジ川の周期に合わせて大規模な祭りを行ってきた。
100人以上の民族衣装を着た男たちが船団を組み、ドラムの音と共に船を漕ぎ、王の船と共に氾濫原を移動する。
川は人々や動物たちの生活を支え、電力を作り、観光を促進し、文化を形成する。
ザンベジ川の恵みは、南部アフリカには欠かせない。