コーヒー発祥の地とされるエチオピアは、コーヒー王国。
コーヒーは嗜好品を超え文化の一部となり、各家庭では毎日豆を煎り砕いて飲んでいる。

カフェは常に混雑し、人々は砂糖や塩・バターや紅茶を混ぜてコーヒーの様々な味を楽しむ。
豆を買う余裕のない者は、コーヒー豆の殻ですら煮詰めて飲む。
人口の約15%がコーヒー産業に従事し、コーヒーが最大の外国為替収入源となっている。

世界で初めてコーヒーを発見したのはエチオピアの山羊使い、カルディとされる。
《放牧中に赤い実を食べてヤギが踊っているのを見たカルディは、その実を食べてみた。
すると自分も思わず踊り出していた。》という伝説が残る。

そんなエチオピアには、世界中のコーヒーが1本の木から広まったとする【母の木伝説】がある。
母の木があるのはアラビカ豆の原産地とされる、エチオピア南西部のカファ地方。
カフェやコーヒー、カフェインなどの語源は、全てこの【カファ】に由来するという。
母の木は高さ約6.6m・太さ約20cmと、他のコーヒーの木よりも大きい。

人類がコーヒーを飲むようになったのは、6世紀~9世紀頃とされる。
1000年以上昔のコーヒーの木が存在するとは考えにくく、母の木は伝説にすぎない可能性もある。
しかしユネスコは2010年《アラビカ豆原産地の生態系保護のため》カファを生物圏保護区に指定。
【カファ地方がコーヒー発祥の地である】とユネスコのお墨付きが与えられることになり、母の木の近くにエチオピア唯一のコーヒー博物館が開設された。

カルディや母の木伝説の信憑性はともあれ、コーヒー好きは必ずエチオピアを訪れるべきだ。
エチオピアのコーヒーは、間違いなく美味いから。